スタンリー・キューブリック監督作品です。
莫大な制作費をかけたとのことですが興行的には良くなかったそうです。キューブリックはなぜこんな作品を作ったのかわからんという不評も聞かれた作品だったようですが、逆に、さすがキューブリックやっぱり偉大だとキューブリックナンバーワンに挙げるフアンもあるようです。そんな話、面白いですね。わたしはこれ大好きな作品です^^
レドモンド・リンドンというアイルランド出身の男が、バリー・リンドンという名を得た半生を描いた大河ドラマで、18世紀のヨーロッパが舞台です。
成り上がり、最後は没落していく男の人生を、たんたんと描いていきます。波瀾万丈なのですが、要所要所に入るナレーションが、物語の直前に張られた「進入禁止ロープ」のようで、一定の距離感を保つ役割をしているようです。だから登場人物に感情移入するといったことはほとんどないのです。
しかし、3時間という長い作品なのに、観てしまう。飽きない。うーむ、面白い。
最後、画面に『美しいものも、醜いものも、今は同じ、全てあの世』という文字がでてきます。あちゃー、このための3時間。。。「やられたー」と思うのと同じくらい、「ほんまその通り!」とも感じる。なるほど、これを感じるための3時間か。。。面白いわ。見終わったあとは何か不思議な気分になるのです。諸行無常。
キューブリックは、本物の城館を使うこと、本物の衣装を使うこと、本物の光を使うこと、18世紀のバロック音楽を使うことにこだわって制作したそうです。ライトは使わず、明かりは室内や夜のシーンはろうそくの光だけを使い、NASAにしかない貴重なカメラを用いて撮影したそうです。「18世紀のヨーロッパをそのまんま再現した」と評されているほど。
興味深いのは本物であればあるほど不思議なことになぜか「滑稽さ」がにじみ出てきます。本物の城館、本物の衣装、本物の光、本物の音楽のエネルギーを最大限に用いて、奇才といわれる映画監督はこんなにも妙なバランスの映画を作るんだなと感動しました。
あともうひとつ面白かったのは、この作品を観た後に、時代物の映画はしばらく観れなくなるという副作用がありました。よっぽど手の込んだセット、衣装をつかった作品じゃないかぎり、うすっぺらに見えちゃって。本物はすごい!(映画館で観たかったなー)ぜひ、ご体験あれ。
最後にテーマ音楽、ヘンデルの「サラバンド」がとても印象的です。
*『バリー・リンドン』/1975年/イギリス、アメリカ/184分/監督 スターリン・キューブリック/出演 ライアン・オニール マレサ・ベレイソン パトリック・マギー